「ほら、おいで」



すやすやと眠る立夏は、無防備でまるで危機感がない。

いつもすぐ赤く染まる頬を、そっと撫でるように手で触れた。

こう言うと怒るかもしれないけれど、立夏の頬は赤ちゃんのように触り心地がいい。


「……記憶を…たしかめたくて……」


こうして頬に触れなくても、あの日のことは忘れたことなんてない。

中学3年生のクリスマスイブ。

一緒に過ごしたあの時間を、俺は忘れたことなんてないんだよ。


忘れられない。

忘れたくない。


寝ぼけた頭が起きてくると、だんだん昨日の記憶が鮮明になっていく。


―『それ以上は、言わんで』


その言葉とともに、立夏の唇の感触を感じて、慌てて頬から手を離した。

全身が熱くなっていく。


そのとき、2階からバイブ音のようなものが聞こえてきてハッとする。

途中、何度も転びそうになりながら、慌てて階段をのぼって、通話と書かれた文字をタップした。



「…っはい、」

「あれ?織くん息きれてる?」

「…いや、…あの大丈夫です」