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暗闇を紛らわすように舞う、真っ白な雪。



『お待たせっ…待った?』



そんな雪を髪にたくさんつけながら、遠くの方から満面の笑顔で走ってきた立夏は、頬を赤くして俺を見上げた。

それだけで指先が熱くなる。


…そんなに一生懸命に走らなくても、俺はどこにも行かないのに



『……待ってない』

『あぁっ、ウソついた!鼻まっか』



そう言う立夏の頬や耳も赤い。

躊躇いなく、自分がつけていた手袋をはずして、立夏の手にゆっくりとつけた。

もともとそのつもりだった。


冷え性のくせに手袋もマフラーもなしで待ち合わせ場所に来ることは想定内。


…昔から変わんねぇな


手袋をつけると、立夏は柔らかく目尻を下げた。



『……織の体温がのこってて温かい』



けれどすぐにハッとしたように、手袋をはずして、それから俺の手を握った。



『…まだ30分前なのに…織さんはいつからいたんですか…?』



頬を赤らめながら、照れ隠しのように、俺に手袋をつけかえしてきた。


……かわいい


『……くふふっ…急に無口!』


かわいいって思うと、まるで時間がゆっくり流れるみたいな感覚になる。

なのに立夏は、俺の話すテンポが遅くても、こうして笑い飛ばしてくれる心優しい人。


今日こそは伝えると決めていた。


―『クリスマスに付き合うとね、そのカップルは、ずっと笑顔でいられるんだって』


どこから流れてきた噂なのか知らない。

普段なら聞く耳も持たない女子の会話が、柄にもなく心に響いていた。



立夏の笑顔がずっと見られるなら、

今日がいい。