「ほら、おいで」



「………さっき言ったろ」



さっきとは、きっとベランダで言ってくれた言葉だ。


―『ほんとうは、ずっと会いたかった』


その言葉が嬉しかったのは本当で、織が嘘をつくような人じゃないことは知っている。

でも、それでも不安になる。

私はきっと、わがままだね。



「じゃぁ…どうして…、ずっとわたしを避けてたの?」

「……忙しかったから」

「…そっか」



織の言葉は、まるで元から準備していたようだった。

織が悩む隙間もなく答えたその言葉に、私はずっと不安を抱えていた。



中学卒業後、織が私に発した言葉は「忙しい」と、たったその一言だけだった。

あの日から私の時間は止まったように、ずっと寒くて寒くて、


織の温もりがほしかった。


今思えば冬休みをあけたときから、織の様子は変だった。


初めに気がついたのは、織の笑顔がぎこちなくなったこと。

それから学校を休むことが増えた。


それでも普通に私と話してくれるし、一緒に出かけたりもした。


中学卒業後、連絡をすると「忙しい」しか返ってこなくなった。


それからもう一つは、「ごめん」



分からない。分からない。


…会いたい、話したい


そのとき初めて、



織に会いたいと、わめきながら泣いた。