『思い出を大切にするところ…、優しすぎるところも…、おいでって言われるのも……』
『…すき』
クリスマスツリーの前で、立夏が俺にくれた言葉だ。
きっと立夏が言ってほしい「あれ」とは、俺の口癖のことだろう。
「あぁ…」
「…伝わった?」
伝わった、けど……
「……めちゃくちゃ恥ずいん…デスガ」
そんな改まって自分の口癖を言ってほしいとお願いされたら、…ふつうに照れくさい。
「そっ…そうだよねっ…すこし欲張ったかも」
落ち込んだ声が、電話越しに聞こえてきた。
…あぁ、しゅんとさせてしまった
ていうか…、そんなに落ち込むほどいいもんじゃねぇのに
そう思ったけれど、立夏が喜んでくれるならと、静かに深呼吸をひとつ。
「……立夏、」
あぁ……すげぇ照れくさいし、
言ったら今よりもっと…会いたくなんのにな。
「おいで」
……言った…言って、しまった
〜〜はっっず
いや、口癖なんだから、俺はいつも平気な顔して言ってたってことだよな……はっず。
「………」「………」
お互いなにも言葉を発しないまま数秒後、静かな夜を照らしたのは、立夏の笑い声だった。
「ふくくっ……了解、今から向かいまーす!」
「はっ?…おい立夏っ?!ほんとに来んじゃねぇよ」
「ふっ…あははっ…冗談だよ、すこし…あたたかくなってきたから、それをあと10回…」
「…言わねぇ」
「ふふっ」
二人の温度差が、今は恋しい。
fin.☃☃