「いただきますっ!」
机の上にあるお鍋から、ホカホカと雲のような湯気があがっている。
食欲のそそられる匂いがする。
ほとんど織が作った、豆腐の入ったお粥。
私は卵をといて入れただけ。
「んん〜〜…おいひ〜〜」
まだ食べていないのに、思わずそんな言葉が口から溢れた。
匂いだけで、おいしい。
「ねっ、織!おいしいねっ?」
「…まだ食ってねぇ」
「鼻がおいしいって言ってるんよ」
ふざけたようにそう言うと、織は真顔で鼻をお鍋に近づけた。
けれど鼻を近づけすぎて、織は鍋から出る湯気に襲われ、勢いよく顔を横に振った。
「んふっ…?!」
織が「んふ」って言った!!
「ふはっ…あははっ」
湯気に襲われてるのも、黙って私の真似をするのも可愛くて、面白くて、
幸せだ。
私が笑うと、最初こそ不機嫌そうに眉間にシワを寄せていた織も、表情をやわらげた。
この幸せがずっと続けばいいのにな。
「おり、いただきますっっ」
「…いただきます」
深夜に食べる、織との幸せは、とてもとてもおいしかった。
そして温かかった。