「ほら、おいで」



「……テンション低いのは、もとからだ」

「ふふっ…だね」



立夏が小さく笑った。

綿雪が、ゆらゆらと空中で遊ぶみたいに。



「次…会ったら、またほっぺ触っていい?」



ほとんど無意識だった。



「えっっどうしていきなりその話に?!」



立夏の驚いた声を聞いて、心の中で思っていたことを、俺はいま口にしてしまったんだと、やっとはっきり理解した。

自分でも少し驚いた。

どうしてあの日の思い出が、いま頭に浮かんだのか、分からない。


でも、一つだけ分かった気がする。


あの日の記憶を、何度も何度も思い出すのは。



「……好きなんだよ、立夏のほっぺ」



きっと、好きなんだ。何度も思い出したくなるくらい、あの日の思い出が、好きなんだ。

俺にとって特別で、二度と戻らない日で、苦しくて、辛くて、でも……好きだったんだ。



「…えぇ?!な、えっ…えぇっ………」

「……いい、…よ」



照れながら、戸惑いながらも、了承してくれた立夏が可愛くて、思わず笑みが溢れそうになるのを、必死に堪える。

そして小さく息を吸った。



「あと…、」

「え?あははっもー、まだあるの?」



「……抱きしめてほしい」