「ほら、おいで」



ふぅっと、息を吐いたとき、ふたたびケータイから音が鳴った。


えっ……

今度は通知音ではない。


着信音だ。


慌てて上半身を起こしてしまい、ブランケットが床に落ちた。


ケータイの画面には、立夏の名前が表示されている。


混乱しながらも、通話と書かれたボタンをタップした。

けれどケータイからは、立夏の声は聞こえてこない。


…電波でも悪いのか?

それとも立夏になにか……


なにか、あったのではないだろうか。


画面を確認すると、どうやらタップしたつもりができていなかったらしい。

俺が電話にでるまえに、立夏が電話をきったのだ。


嫌な予感がした俺は、慌てて立夏に電話をかけた。

ワンコールでつながったけれど、声を聞くまでは安心できない。



「りつか…?」

「あっ、織」

「さっき、電話かけてきたろ、…大丈夫か?」



そう問いかけると、立夏は照れくさそうに小さく笑った。



「ごめんね、間違えて電話かけちゃった」