「ほら、おいで」



こんなところに隠れてたのか、俺のメガネ。

時計の針とか、小さな数字とか文字とか、授業で板書を書き写すときとか、そういうときにしか使わないけれど、ないと困る。


……もう失くさないようにしないと


そう心の中で呟いたとき、大切なものをポケットに入れたままだということを思い出して、眠気が吹っ飛んだ。


とりあえず、メガネを机の上に置いて、階段をおりる。

今日着ていた、服のポケットに手をつっこむと、それに手があたって、丁寧にゆっくりとりだした。


立夏からもらったクリスマスプレゼント。

雪だるまの刺繍が入った、メガネケースだ。


ずっと夢を見ているようだった今日が、ちゃんと現実なんだと、このメガネケースが教えてくれているような気がした。

それを手に持ったまま、ゆっくりと階段をのぼる。


ふたたびベットに腰かけてから、ごろんと寝転がり、メガネケースをいろんな角度からみる。


中学の頃につかっていたメガネケースが壊れてしまってからは、新しいものは買っていない。

だから時々、メガネがどこにいったか分からなくなるのだ。


これからはもう…失くさないように、大切にしまっておこう。