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かじかんだ手で鍵をさしこむ。


そのとき、なんとなく後ろを振り返りたくなって、ゆっくりと顔を向けた。



そこに、立夏がいた記憶が、

鮮明に頭に浮かんだ。



『じゃ〜〜ん、びっくりした?くりすますプレゼントなのだ!』

『一人暮らしで寂しいであろう、おり様への、さぷら〜いずっ!』



…どう見ても、サプライズしにきたようには見えない状況だったな


思い出して、思わず「ふっ」とはにかむ。



「…いや、…なにひとりで微笑んでんだ…」



ふと我に返り、へにゃりとあがった口角をもどして、家に足を踏み入れる。


洗面所で手を洗って、リビングの電気をつけると、床に散らばった、大量の上着とくつ下が、真っ先に視界に入ってきた。



『……サイフ…いや、…なにもかも持ってきてねぇ』

『あははっ』

『……笑ってる場合じゃねぇ』



立夏が俺の手をひいて、慌てて外に飛び出していったから、上着もくつ下も、床へ落として、そのままの状態だ。


ふと、膝をまげて上着を手にとる。



「……たまには…こういうのも…」



……いいな


また自然と緩んでいた口角をもとに戻して、のんびり、部屋を片付け始めた。