「ほら、おいで」



「ほら見て〜!織くんの好きなお菓子!……って……ふたりとも、どうしてそんな顔が赤いのよ」



ほらぁ〜〜!!


母ちゃんは楽しそうにニヤニヤ笑いながら、また私の背中をバシバシたたく。


賑やかな母ちゃんに呆れながらも、横目で織へと視線を向けた。



「っ…ふははっ…すみません、ちょっとだけ、ハグしてました」



織は目尻をくしゃっとさせて、口を開けて笑っていた。


……笑ってる


その無邪気な笑顔を、そばで見ていたい。

年老いても、


ふたりで一緒に、笑っていたい。



きっとまだ遠い話だけどね。

私がおばあちゃんになって、記憶が薄れていっても、大切だよ。



ずっと、大切なんだ。



織の右頬に、


ひとしずくの涙が、流れていった。