けれど両手を広げてしまったからには、もうひきさがれない。
照れるけど、でも、織が笑ってくれるなら、泣けるなら、安心するなら、
私は抱きしめたい。
ここにも織の居場所があるんだよって、温もりで伝えたいの。
織はゆっくりと私に近づいて、そしてぎこちなく、体を寄り添わせた。
「あははっ…もっと、体重かけておいでよ」
ふわりと触れただけの距離がくすぐったくて、思わず笑ってしまう。
織はそっと、わたしの肩に顔をうずめた。
髪が耳に触れてくすぐったい。
「ありがとう…立夏………好きだよ…」
え……?
とろけるような甘い声が、鼓膜を揺らした。
いま…スキって言った……?
織の体がゆっくりと私から離れてゆく。
たしかめなくても分かる。
視線があった、織の頬は赤くて、口を手の甲で隠すように、おおっている。
「……初めて…言われた」
あのとき、クリスマスツリーの前では言ってくれなかった言葉。
どうして今いっちゃうの…?
「…ノックアウトって……言ったのに〜…」
__ガチャッ
タイミング悪く、勢いよくドアが開いた。



