「ほら、おいで」



じとーっと視線をおくると、織は渋々こちらを振り向いた。

そして、困った顔でへらりと笑い、右の手のひらで自分の顔をおおう。

それでも、めげずに織に視線をおくっていると、母ちゃんに頭をしばかれた。



「あんったが悪いんだから、織くんは悪くないわよ、あほだねぇほんと、あっはっはっ」



母ちゃんは、笑う雰囲気じゃなくても、いつも先に笑ってくれる。


だから…なんだか、私まで笑顔になるんだ



「も〜…ふたりに迷惑かけて…わたしほんとにアホやん〜〜…」



そう言って笑うと、織もやっと安心したように微笑んでくれたから、ほっとした。



「寒いから、はやく家に入りなさい、あっ織くんも、よかったら一緒にごはん食べてってよ」



母ちゃんが、はっとおもいついたように言った。

ドアを大きく開けて、「おいで」と、手招きをしている。


私は母ちゃんの提案に賛成だ。


だって…そうすれば…

もう少し一緒にいられるから


けれど、織は家に入ろうとはしなかった。



「あっ……いえ、俺は…」

「明日バイトがあるので帰ります」