「ほら、おいで」



家の前に着くと、織の手がゆっくりと離れていった。


…もうバイバイなんだ


胸がぎゅっとしめつけられたみたいに苦しい。

それでも今日のお礼を言わなきゃと、コンクリートに向けていた視線をあげたとき、思わず「えっ!?」と声が出た。



「おっ、織さん!?」



織は、躊躇なくインターフォンをかってにおして、澄ました顔をしている。

ピンポーンと、音が鳴るのが聞こえた。

織とバイバイしてから、深呼吸して、自分のタイミングでおそうと思ってたのに…!!


てゆうか、織さん帰らんの?!


ぐぐっと織の手をインターフォンから離しても、もう遅い。



__ガチャッ



ドタバタと慌てた足音が聞こえた後、勢いよくドアが開いた。

母ちゃんだ。

視線があって、思わず息をのんだ。


母ちゃんの瞳が揺らいでいる。不安そうに眉を下げて、口をぽかんと開けている。


…すごく…私のことを心配してくれてたんだ…


謝るのは、これを言った後にしよう。



「……ただいま」



母ちゃんは目尻を下げて、くしゃっと笑った。



「おかえり、立夏」