「ほら、おいで」



雑にくつをぬいで家にあがったけれど、それからもお互いむきになって言い合って、最後は私が家を飛び出した。



『かあちゃんの、あほぉ〜〜うわぁぁ〜ん』



今となっては、どうしてそんなことで喧嘩してしまったんだろうと思う。


お互い相手のことをおもって、
言った言葉なのに。


それを理解できるほど、今は冷静になった。


だからきっと…素直に謝れるはずだよね

大丈夫。そう何度も自分に言い聞かせる。


大丈夫…大丈夫…



「大丈夫」



うっかり心の声がもれたわけじゃない。

ゆっくりと視線をあげると、織は優しく目を細めて、私の家を見つめていた。



「……立夏が帰ってくるのを待ってる」

「ただいま…って、…その言葉を待ってる」



……待ってる…


そう言われて浮かんだのは、いつも学校から帰ってくると、嬉しそうに「おかえり!」と笑う母ちゃんだった。



「そうかな」



私がそう呟けば、織は「…うん」と、静かに返事を返してくれる。


なんだか少し、心が落ち着いた。