°❆
「……はぁぁ…さむぃー…」
イルミネーションから遠ざかり、一定の間隔にある、街灯のあかりを頼りに歩く。
さっきまで賑やかだった音が、すごく静かになった。
今向かっているのは、きっと私の家。
何も言わずとも、小さい頃から住む、見慣れた道だから分かってしまう。
……あぁ…帰らなきゃいけないんだぁ
別に、もう帰りたくないわけじゃないけれど、なんとなく気が重い。
会ったらなんて言おう、とか、まだ母ちゃん怒ってるかな、とか、いろいろ考えてしまうから。
かじかんだ手が痛い。
雪を触ったからか、じんじんと指先が痛い。
「さむ……いたい……」
思わず、「…はぁ」とため息をついた。
「なにがいてぇの?腹?」
「ち、ちがう」
隣から心配そうに問いかけられ、慌てて首を横に振る。
「どこがいてぇ?」
「手がいたい」
ぱっと、織に両手をひろげて見せた。