°




「……りつか、」

「…ん?」



織が震える声で私の名前を呼んだのは、両側にイルミネーションがある道を、またゆっくりと歩き始めた後、遠くにツリーが見え始めた頃だった。



「……俺…クリスマスの夜が怖かったんだ」

「…え………こわい……?」



織がこんなふうに自分のことを話すのは初めてで、戸惑いを隠せずに聞き返す。

そして、はっとした。



「…大丈夫?!じゃぁやっぱりはやく帰ろうよ?!」



思わず立ち止まって、早口になる。

すると、なぜか織は優しくはにかんで、「今は大丈夫」と、言葉を付け足した。



「いや…ううん。…怖い…、けど、それでも一緒にいたい」



ぎゅっと、胸が締め付けられたみたいだった。



「もっとはやくそうしてやれなくてごめん」


「忙しい…って…、

傷つけて…ごめんな、立夏」



また織に謝らせてしまった。

再会したときからずっと、私は織に謝らせてばかりだ。

ズキ…と、心が痛んだ。

それを隠すように、空を見上げて笑う。