「……俺お金持ってねぇけど」
ミカ達との思い出に浸りながら歩いていたせいか、いつの間にかショッピングモールの入り口に立っていて、はっと我に返る。
あははっ…そっか…織は、私がウソをついたことをまだ知らないから、ケーキを買うと思ってるんだよね
「ケーキ買わないから大丈夫」
「……でもさっき」
「ミカの母ちゃんと父ちゃんがね、すごく申し訳無さそうな顔して謝るから、笑ってほしくてウソついたんだ」
織は目を丸くして、それからすぐに、ふっと優しく目を細めた。
その笑顔に、ドキッと胸が高鳴る。
少し時間が経つと、なんだか自慢してるみたいで照れくさくなってきた。
「だ、だから見つからないようにっこっそり帰ろっ?」
熱い頬をごまかすように、慌てて踵を返した。
けれど前には進めなかった。
織の手が肩に触れたかと思えば、ぐっと抱き寄せられて、わたしはバランスを崩す。
「…え……?」