「ほら、おいで」



「おりっ」


私にしか分からないくらいの程度で、困った顔をしている織のもとへ勢いよく駆けていった。

すると織は、

ホッとしたように表情をやわらげる。


これも、私にしか分からないくらいの、表情の変化だ。


私が来たことできっかけができたのか、織はスタッフの人にぺこりと頭を下げて、背中を向けた。


織の驚いた顔が好きな私は、とっさに手に持っていたメガネケースを、白いパーカーのお腹にあるポケットに入れた。



「なんのゲームしてたのっ?」

「…りんごの皮…はやくむいたほうが勝ちゲーム」

「あははっ…そっか」



ゲームの名前を聞いて、織が1位をとったことに、深く納得した。

だって織、料理すごく上手なんだもん。

きっと自覚がないから、自分が一位をとってしまったことに、自分が一番驚いているんだろうな。

どうして1位の景品をゆずったのかは分からないけれど、きっと、たぶん織が優しすぎるからなんだろうと、そう思った。



「…立夏は?」

「糸通しゲーム」

「…はっ?」



えっ…?

なぜか勢いよく私の方へ振り向いた織は、怒ったような顔をしている。

な…なぜ怒る…