「ほら、おいで」



再会してから、初めて呼ばれるその響きは、なぜかクリスマスプレゼントをもらったかのように嬉しい。



「立夏、ごめん」



嬉しかったのに、織はなぜか切なげに謝るから、私まで悲しくなってしまう。

どうして織に謝られているのか分からない。分かりたい。


織の瞳は小さく揺らいでいた。

はぁ、と白い息を吐いた後、私が問いかけるよりも先に、織は口を開けた。



「立夏に、触れてもいい?」



少し甘えを含んだその声は、はっきりと私の耳に届いた。



「えっ…」



真っ直ぐと射止められるように見つめられ、一歩後ろに下がってしまう。

全身が熱くなって、織から視線をそらした。


織がそんなことを言うなんて、熱でもあるんじゃない?

そう言い返すには、少し勇気がいるくらい、織の瞳は真剣だった。



「どこに…触れるの?」

「……じゃぁ…、ほっぺ」

「っ?!…どうして?」


もしかして織は、ほっぺフェチ?!

自分の頬をツンツンとつついてみたけれど、たいして気持ちいいわけでもない。



「……記憶をたしかめたくて」



織のその言葉を理解することはできなかった。


だって私は、織にほっぺを触られた記憶なんてない。