リストカットの傷跡は生々しく私の手首にあった。

 私は死にたかった。

 誰にも必要とされてないことが寂しくて辛くて、死ねば楽になるんじゃないかって時々思っては、カミソリを手にしていた。

 圭兄はその傷跡を見て、ぎゅってさらに力強く抱きしめてくれた。

 それから「大丈夫。小春は1人じゃない。オレがいるから。」と優しい声でささやいてくれた。

 一緒に家に帰った。私があまり話さないので、圭兄が学校のことや部活のことをいろいろ話してくれた。家の前に来たとき、「泣きたいときはオレのところに来いよ」とはにかみながら言ってくれた。

 それから叔父や叔母が私にきつくあたるたびに圭兄がかばってくれた。

 いつしか私は圭兄に恋心を抱くようになっていった。あの温もりが忘れられなくて。