叔母の家に居候するようになって、圭兄だけが私の味方をしてくれた。

 それにはきっかけがあった。

 ある日の帰り道、私は立ち寄った公園でずっとブランコに座っていた。どこにでもある普通の公園。

 夕ご飯の支度をしなくちゃいけないけど、過呼吸で苦しくてその公園で休んでいた。

 「パニック発作」という精神的な病気。脳のホルモンがストレスで出なくなって過呼吸や動悸を起こすのだ。

 その公園は道路から丸見えだった。

 そして見つかってしまった。圭兄に。

 圭兄はテスト期間で早く下校していたようで、私を見つけるとチャリを置いて駆け寄ってきた。

 私は嫌だった。

 他人に自分の弱いところを見せるのが怖かった。

 また避けられたらと思うと怖かった。

 「小春、大丈夫か?」と圭兄が言った。

 そのあたたかい言葉に過呼吸がおさまり、涙が一筋流れた。

 はじめて心配された。

 それから圭兄はブランコの前にひざをついて私を抱きしめてくれた。

 どれだけ時間がたっただろう。圭兄脳での中で、両親が死んで泣かなくなってからはじめて大泣きした。泣きじゃくる私を圭兄はずっとよしよしと頭をなでてくれた。

 そして、気づかれてしまった。長袖に隠したリストカットの傷跡を。