叔父の家族は叔母と1つ上のいとこの3人家族だ。いとこは「圭」という高校1年生のお兄さんだった。でも家が東京で育った私は、宮崎に嫁いだ叔母の家族とほとんど接したことがなかった。

 宮崎の冬は東京よりあたたかかった。でも冷え切った私の心は言葉をなくし、感情がなくなっていた。

 私は叔父の家でもほとんどしゃべらず、笑えなかった。

 だって聞いてしまったから。

 叔父が酔ったときに私の両親をなじるのを。そして知っていた。私のことを「暗い愛想のない子」と叔母が思っていることを。

 私にはこの家に居場所なんてないんだって思った。

 叔父は酒癖が悪く酔うたびに両親の悪口や借金の話をした。

 叔母は私をかばうことなく、まるで召使いかなんかのように私に家事をさせた。冬だったから手にはあかぎれができて血がにじんだりしていた。

 
 圭兄ちゃんは県内で一番頭のいい宮崎西高校の理数科にいた。サッカー部で家にはほとんどいなかったし、夜遅くに帰ってきて勉強していた。

 
 中学校3年で編入した学校でも私は笑えなかったし、できるだけ目立たないように、目立たないようにしていた。メガネに二つ結びの三つ編み。まるで絵に描いたようなまじめのガリ勉。はじめは興味本位で話しかけてきたクラスメートも話さない私に無関心になり私は学校でも1人だった。

 でも私はそれでよかった。もう傷つきたくなかった。大事な人を作ってしまうと別れが辛すぎることを知ってるから。

 そして勉強だけが私に残された唯一の逃げ道で、何も考えなくてよかった。私に残されたたった一つの取り柄・・・・。