トイレから山田に電話した。
「山田君? いまどこ? 」
「居酒屋の外ですよ。心配だから、出てくるのを待っていました。今日子さん、いまどこですか? 」
「居酒屋のトイレよ。これから店を飛び出すから、私を捕まえて! 」
「今日子さん、なにかあったの? 」
「とにかく、私を捕まえて! 」
今日子はマイクに見付からないように居酒屋を飛び出した。
山田は店の横で待機してくれていた。
「今日子さん。早くこっちに・・・」
山田は今日子の手を掴み小走りに路地に入った。
「今日子さん。何があったの? 」
「マイクに迫られた。キスされた。このままだと危ないと思って・・・」
山田は怖い顔をして店に戻ろうとした。
今日子は山田の腕を掴んだ。
「山田君。どうするの? 」
「ゆるせません。一発殴ってきます。」
「ダメ。どんな時でも暴力はダメよ。」
「だって、今日子さん・・・」
「キスだけだから。」
今日子は山田に縋った。
「どこにキスされたの? 」
今日子は口を指さした。
「そこだけ? 」
今日子はコクンとうなずいた。
山田は今日子にキスをした。強烈に・・・
「上書きです・・・」