塩彼氏の愛

ユンちゃんのマンションの前でタクシーから
降りると、すぐにタクシーは夜の中に消えて行った。無言でタクシーの行く先を長めていると

唇にチュッと不意打ちなキスが降ってきたので
ちょっとビックリしてユンちゃんの方に視線を向けると、ニヤッとイタズラ少年のような笑みを浮かべながら

「ハナにはこれから
俺を妬かせた罰と蔑ろにした罰を
俺の気が済むまで受けて貰うからな。
覚悟しとけよ。俺の愛がどれだけ深いか身体に教えてやるよ」

私の背中に優しく手を回すと
歩調を早めてマンションのエントランスに
招き入れる。

「あんな事もこんな事もさせるからな」

「ええっ?何をされるの?嫌だよっ!
痛いのとか怖いのとかはナシだからね」

「ははは笑 大丈夫 デロッデロに甘やかすから。アホで間抜けで無自覚なカワイイ俺のお姫様だからな…彼女を甘やかすのは彼氏の特権だろ?!」

と、ウィンクをかます。

なんなの?ユンちゃんどうしたの?
今日は甘さが強すぎるようです!
目がおかしくなりそうだわ。

他の女子に見られたら大変っ!!
周りをキョロキョロしながら通りすがりの
女子に軽く威嚇しながらユンちゃんを隠すと

「ぶふぁっ笑笑」

ユンちゃん吹き出して大爆笑。

ヤバいって…うちの彼氏が壊れたよ。

大爆笑が止まらないうちのダーリン。

ダメだこりゃ
全くもう…人の気も知らないで…

フッとため息をつきながらもユンちゃんに急かされるままに部屋の前に到着。

「さてと、ハナ 家に着いたぜ?
覚悟は決まったか?やめてって言ってもやめないからな、覚えとけ」

その後はもう大変…
玄関閉めるなり、息もつけないほどにキスされ
デロッデロに甘やかされ、愛され、辞めてって言っても「無理」の一言で片付けられ…

それが朝まで続き、昼まで続き
身体が痛くてベッドから起き上がれない私は
夜を迎え、2夜連続のフルコースを味わい、2日間も家を空け、お兄ちゃんからめちゃくちゃ怒られるというダブルパンチを喰らうのでした。

てか、お兄ちゃんさ、私24才だよ?
「外泊だなんて穢らわしい!お兄ちゃんは花をそういう悪い子に育てたつもりはない!!花を悪い女にするのは悠之介か?あいつぶっ殺してやる!!」
コレハナクナイ?
もう一度言う、私は24才!仕事もしてお給料も貰い、成人式も無事に終えた自立した立派な大人なんですけどっ!!

はっ?!お兄ちゃんの事考えると
ユンちゃんの逆鱗に触れちゃう!

ダメダメ!
お兄ちゃんは私の頭から退出願います…
ユンちゃんを怒らせるのは
絶対に辞めなくっちゃ!!

ともあれ、相変わらず、普段は愛想のへったくれもないバカだとかアホだとか腹の立つ事ばかり言う塩湖のようにしょっぱすぎる彼だけど、彼の愛は底なし沼のように深く私を翻弄します。


「おいっ、お前久しぶりのデートで
なんて格好してきたんだ!」

「えっ、スカートだけど履いたらダメなの?
ミヤがすごく似合うって褒めてくれたよ?」

「ダメに決まってんだろ?お前なんかジーパンが一番お似合いなんだよっ!!それに、周りの男がチラチラ見るだろ!!バカかお前は!!」

「何でそんな言い方しかできないの?!
ユンちゃんのためにオシャレしてきたんでしょ!もう知らないっ!!こっち見ないで!ふんっだ!!ユンちゃんなんか知らない!!」

「ああああっ!もう!悪かったよ!
ダメじゃないよ…似合ってるよ…
カワイイよ……周りが見るからさ…
ごめん、機嫌治せって…」

ふふふ愛してるよ、ユンちゃん。
でもムカつくから言ってあげない!笑

第一話 完