「ねぇ、できるにはできるんだけど…水を作るの、何だかめちゃくちゃ大変だよ?」

「そうだろうねぇ。竜巻はそこにある空気を上昇気流にしてやるだけでいいから簡単。でも、水は空気中の水分をかき集めなくちゃならない。今日みたいに湿度が低い、カラッカラに乾いた日は特に難しいよ。でも、この集落の魔女の血を引くんだから、がんばんなさい」

「この集落の魔女って?」

 おばあちゃんがお母さんの方を見る。

「お前、何にも教えてないのかい? いくら自分が雨降らしができないからって、それはどうなんだね?」

「違うって! ひがんで教えなかったわけじゃないのよ。だって、考えてもみてよ。ツムギが魔女だって分かったのは、つい最近なのよ? さらに詠唱なしに魔法を発動させるとか、聞いたこともないようなこと、やらかしてくれちゃって。ツムギの安全確保しか頭になかったのよ」

「ああ、確かに。じゃあ、教えてもかまわないんだね?」

「いいに決まってるでしょ? 今さら隠す理由なんてないもの。私からツムギに説明するわよ」