お母さんは、大きなガラス瓶がぎっしり並んだ棚から、5つほど瓶を選ぶと、少しずつハーブを取り出した。

 ポットにそれらを入れると、お湯を注いで、キッチンタイマーをセットした。

「それで? 突然、お店にやって来るなんて、何があったの?」

 私は、学校での出来事を説明した。

 体育の授業中に目眩を起こして保健室で休んだこと。それから、黒猫に付きまとわれてること。

「黒猫!? 今、黒猫って言った?」

 お母さんはギョッとした。

「うん、真っ黒な猫。まだ、近くにいるんじゃないかなぁ」

 私は、お店のドアの方を指差した。

 お母さんは、ゆっくり、静かにドアへ近付いた。それから、音を立てないように慎重に、慎重に、5 cm ぐらいドアを開けると、外を覗き見た。

 再びドアをそうっと閉めて振り返ったお母さんの顔は、強張ってた。

「本当。いるわ、黒猫」

 ピピピピピ……。そのとき、キッチンタイマーが鳴った。