魔女の恋は空回る

 お母さんは、私の向かいに座った。

「ツムギ、今日、お店に来た男の子……」

「ん? 同じクラスだよ。ハヤト君っていうの」

「そう。そのハヤト君なんだけど…….」

 お母さんが私の顔をじっと見たまま、沈黙した。

「どうしたの? 何?」

 何なに? 落ち着かないんだけど。私がハヤト君のこと好きってバレた?

「ええっと……感じのいい子だったわね。優しそうな…」

「うん、実際、すごく感じよくって、優しいよ」

「あ、それなら、いいのよ…うん、それなら…」

 変なお母さん。

「何の話?」

 お父さんも不思議そうにしている。

「今日、ツムギのクラスの子がハーブティーを買いにきてくれたの。それがカッコいい好青年だったの」

「おおい、ツムギ目当てじゃないだろうな?」

「まさか、あり得ないよ!」

 お父さん、何言っちゃってんの。

「まあまあ、いいじゃないの。ツムギももう中2よ? 彼氏がいたって普通でしょ」

「えー、まだ中2だよ! 彼氏がいる子なんて少数派!」

「あれ、そうなの!?」

「そうだよー。お母さんだって、中2で彼氏なんていなかったでしょ?」

「……ええっと、どうだったかなぁ…」

 お母さんの目が泳ぐ。

「おおーい…」

 お父さんがショックを受けてる。

 …お母さん、いたんだ、彼氏。

 そして、お父さんにはいなかったんだね、彼女。