「えーっ! そんなの、全然、知らなかった。そのときに、教えてくれたらよかったのにー」

「先生がみんなの前で褒めた後で、美的センスないオレがそういうの言うって恥ずかしいじゃん。何なら今も恥ずいよ」

「1年生のときは、文化祭の展示とか、コメントくれたのにー」

「あれは美術の先生の後じゃなかったし…それにクラス違ったから、話しかけるチャンスが少なくて必死だったっていうか…ええっと…」

 んん? んんん??

「そ、そういえば、今年はバスケ部のスケッチに来ないの? オレ、レギュラーになったし、基礎練しかやってなかった、1年の最初の頃とは違うんだ。今、来てもらったら、オレのことも描いてもらえないかな、って期待してるんだけど」

 あのときだって、既にハヤト君のことだけを見てスケッチしてたんだよ。

 そう白状できちゃえばラクなのに。

 だって、自分の気持ちを自覚しちゃった今、ハヤト君を冷静に観察して描ける気がしないっ。

「あっ、もちろん来てくれたら、もう2度とボールをぶつけないように気をつけるから!」