魔女の恋は空回る

「試飲はどうされます?」

「えっ、でも、アンチエイジングしたら、オレ、どうなっちゃいますか?」

「特に美肌効果は感じられないと思います。でも、味を確認できますし、薫りを楽しむこともできますよ。それから、リラックス効果もあります」

「あ、じゃあ、試飲お願いします」

「すぐ準備しますので、カウンター席にお掛けになって、お待ちくださいね」

 お母さんがハーブを選び始めた。

「この前の席替え以来の隣席だ」

 ハヤト君が笑った。

「短い間のお隣さんだったね」

 私も一緒になって笑った。

 お母さんがハーブに魔法をかけた。

 その瞬間、ハヤト君が、立ち上がって、お母さんの手元を覗き込んだ。

「な、何か気になるものでもあった?」

「ん? いや、ハーブティーって、どうやって淹れるのかなーって思っただけだよ。紅茶とかと同じなんだね」

 なーんだ、びっくりした! そうだよね、魔法に気づくはずないもんね。

「ご安心ください。お湯の適温と抽出時間を記したメモをお付けしますから」

 お母さんが、ハヤト君の方に振り向いて言った。