「いらっしゃいま…えっ!? ツムギ?? 何なに、一体どうしたの?」

 お母さんの営業スマイルは一瞬でかき消え、本気で驚いていた。

 学校から直接、お店に来るのは初めてのことだった。

 ここは、お母さんがオーナーの、ハーブティーを専門に販売するお店なの。

 お客様は、『ぐっすり眠りたい』とか、『ダイエットしたい』とか、自由に要望を言ってくれればいい。すると、お母さんがそれに合わせて、ハーブをブレンドする。

 少し前には、『恋に効くハーブティーを購入したら、本当に恋が叶った』という口コミが広まって、連日、女子高校生でお店がいっぱいになったこともあった。

 お店には試飲できるように、カウンター席もある…って言っても、2人しか座れないんだけど。

 私がお店に入ったのは、ちょうどお客様が帰った後で、お店の中にはお母さんしかいなかった。

 私はカウンター席に座った。

「お母さん、リラックスできるハーブティー飲ませて」

「ちょっとぉ。うちは、カフェではありませんけど? 仕方ないわねぇ。代金はお小遣いから天引きしておくからね?」