魔女の恋は空回る

「いらっしゃいませー」

 お母さんが瞬時に営業スマイルに化けた。

 どうしよう…。

 私は一瞬、悩んだ。いつもなら、私もお客様にあいさつをしてる。でも、今日は私も客なのだ。

 そうだ、知ってるお客様だったらあいさつして、一見さんなら完全なる客に徹することにしよっと。

 ドアの方にチラッと盗み見た。

 ぶっ!!

 危なかった。口に含んでいたハーブティーをもう少しで吹き出すところだった。

 何で!? どうしてここにいるの?? ハヤト君がっ!!

「あれ、もしかして、小山?」

 ハヤト君も、すぐに私に気が付いた。

「何してんの?」

「えっと…ハーブティー買いに来て、今、試飲してるとこ」

「そっか、そうだよな。分かりきった質問だったわ」

 ハヤト君は爽やかに笑った。

「てか、試飲もできるんだ。それ、いいな! オレ、この店、初めてなんだ。姉貴が、『美味しかったし、効果あったから、オススメ』って言っててさ」

「それは嬉しいです。本日はどのようなハーブティーをご希望ですか?」

 お母さんが本気で嬉しそうな笑顔で尋ねた。

「ええっと、美肌になるお茶とかってありますか?」

「もちろん、ございますよ。ふふっ、彼女さんにプレゼントですか?」

 ええっ!? 嫌っ、そんなのっ!!

 私の頭には、サキちゃんの顔が浮かんだ。