土曜日になった。土曜でも今日はお母さんがお店を開ける日だ。

 私は客として店内に入った。

 お母さんがワザとらしくかしこまる。

「いらっしゃいませ。ご予約のお客様ですね? 本日は、勝負運を上げるハーブティーでよろしかったですか?」

「はい、それでお願いします、ぷぷぷ…んん、っんぐ!」

 私はこみ上げてくる笑いを抑えた。

「試飲はされますか?」

「はい、お願いします、ぷふっ」

「では、カウンターにかけてお待ちくださいね」

 お母さんは私に背中を向けて、種々のハーブを選び、ポットに入れた。

 カチャッ! っという音に紛れて、お母さんが何か呟いたのに気付いた。

「お母さん、もしかして、今、呪文を唱えた?」

「バレた?」

「でも、いつ魔法かけるんだろうって見てたから分かっただけで、これは普通だったら、全然、気付かない!」

「ならよかったわ、ふふふ」

 お母さんはカウンターに、お湯を注いだポットを置いた。

「5分待ってね」