魔女の恋は空回る

 美術準備室は薄暗かった。通気孔があるのみで、窓がないんだから、当然だ。

 私はすぐに電気のスイッチを点けた。ここは慣れっこだもん。

 準備室が一瞬、パッと明るくなった。でも、すぐに、パチンッという音とともに、再び暗くなってしまった。

「あらー、蛍光灯が切れちゃったみたいねぇ。先生、空き時間に自分で交換するから、このままでいいわ。暗いから足元に気を付けて入ってきて」

 はっ! こんなときは!!

 昨日、覚えたての魔法を使ってみたくなった。

「先生、準備室、ごちゃごちゃし過ぎ。片付けようよ」

 私は先生に文句を言った。

 私は魔法を使えばいいけど、サキちゃんとハヤト君は歩きにくいはず。

「あっ、何か踏んじゃった」

 サキちゃんが小さく叫んだ。

 ほら、やっぱり。

「気にしなくていいわ。床に落ちてるのは、たいしたものじゃないはず」

 みんなが会話をしている間に、私は猫目の呪文をこっそり唱えた。

 うわー、よく見える!

「あっ、ハヤト君、足元に小さな段ボール箱あるから、気を付けて」

 私の注意を聞いて、ハヤト君は横によけたたから、つまずかずに済んだ。そう、ハヤト君は…。