「お父さん、お父さんはお母さんが魔女だって分かってても、お母さんのこと好きになったと思う? お母さんが魔女だっていう話を結婚前にきちんと信じたとしても、お母さんと結婚したと思う?」

「あはは、もちろん」

「でも、魔女だよ?」

「知り合う前に『魔女がいる』って聞いてたら、怖いと思ったかもしれないな。童話なんかに登場する魔女は、不気味で意地悪だから。でも、お母さんはそうじゃない。そうだろ?」

 私は黙ったまま、頷いた。

「お父さんとお母さんの出会いは知ってるか?」

「うん。お父さんの会社の近くにあったカフェで、お母さんが働いてたって」

「そう。ハーブティーと、ハーブ入りの焼き菓子がメインのカフェだったんだ」

 お母さんが『懐かしい』って言って、少し笑った。