あのとき、私の心配をして、さらにハンカチを貸してくれたサキちゃん…あの子の天井知らずの好感度は、ますます上がったはずだ。

 そんな、まさか!

 私は自分の思いつきをバカらしいと思った。

 サキちゃんは、あのとき、真剣に私のことを心配してくれてた。サキちゃんは本当にいい子だもん。いつだって、誰にでも優しい。

 ハヤト君のことさえ除けば、サキちゃんのことは大好きだ。

 でも、ひょっとして、それが自作自演でした、なんてこと、あり得る??

 なんでだろ。泣きたくなってきちゃう。

 あっ、いっけなーい! 

 そのとき、真っ白なスケッチブックが目に入った。

 もうスケッチに集中しないと。いくら自由な美術部でも、流石にサボるのはダメだもん。

 私は気を取り直してスケッチを始めた。

 でも、すぐにまた中断することになった。

「小山!」

「あれ!? ハヤト君? まだ部活に戻ってなかったの?」