どこで描こうかな。日差しが当たらなくて、目立たない…

 あっ、ここがいい。

 校舎から運動場へ出る途中にある階段に座って描くことに決めた。

 階段の横の斜面には、イチョウとモミジが植えられていて、どっちも枝葉を広げてる。葉は、緑色から、少しだけ黄や赤に変化してるところ。

 変化の途中のこの状態を、鉛筆だけで表現できるか、挑戦することに決めた。

 階段に座ってから、鉛筆とスケッチブックを広げた。

 準備を整えて、風景観察を始めた。

 ん?

 私は、ふいに運動場が気になり始めた。どうしてだろう。

 気になり始めると、どんどん気になってくる。

 とうとう居ても立っても居られなくなっちゃった。

 スケッチ道具一式を階段に置いたまま立ち上がった。それから足が向くままに任せて、運動場に近付いた。

 あっ、バスケ部だ!

 バスケ部とバレー部は、交代でしか体育館を使用できない。

 今日はバスケ部が運動場の日なのね。ハヤト君、いるかな?

「ツムギ!」

 唐突にショコラの声がした。それは緊迫した声だった。

 ショコラ、どこ? 

 ショコラを探した。いた、いた。『どうしたの?』って尋ねようとした、そのとき…

 !!!

「イタタタタッ…」

 私は自分のおでこを押さえて、よろけた。

 バスケットボールが転がる。

 どうやら私の頭にこのバスケットボールが飛んできたみたい。

「ツムギちゃん、大丈夫!?」

 声が聞こえた瞬間、ショコラは姿を消した。

 声の主はサキちゃんだった。