「ねぇ、16年前に魔法を見せればよかっただけなんじゃない?」

 私は、素朴な疑問をお母さんに投げてみた。

「うーん。魔女の暗黙の了解に、『一般人の前で魔法を使わない』っていうのがあるのよね。だから、ツムギの前でも、これまでは魔法を使わないようにしてたのよ。別に罰則とかはないんだけど。でも、考えてみればどうしてかしらね? 魔女の倫理観? それとも、魔女狩りを恐れてなのかなぁ?」

 お母さんはコンロの火を止めた。

「はい、どうぞ」

 煮出された薬が、私の目の前に突き出された。

 うっ!

 でも、さっきのお母さんの剣幕を見たら、何も言えっこない。

 ええいっ! 決心すると、一気に飲み干した。

 まっずぅー。期待を裏切らないね。

「あら? あら、あら、あら?」

 お母さんが驚いている。

「おばあちゃん、流石だわ! あっという間に体から溢れ出てた魔力が消えたわよ」

 私には全く分からない。当然、お父さんにも分からない。2人して、『へー』としか言えなかった。