保健室前に着くと、保健委員の子がドアをノックしてくれた。

「はーい、どうぞ」

 養護の先生が優しい声で答える。

「失礼します。体育の授業中に気分が悪くなったみたいなので、連れてきました」

「あらあら、顔色がよくないわ」

 養護の先生は、すぐにベッドに案内してくれた。

「じゃあ、私は授業に戻るね」

「ありがとう…」

 弱々しい声でたったひと言、お礼を言うだけで精一杯。やっぱり気持ち悪ーい。

「学年、クラス、名前を教えてくれる?」

「2年、1組、小山ツムギ…です」

 先生は、保健室利用者名簿に記入していく。

「次は熱を測ってね」

 先生は私に体温計を手渡した。

「同時に脈も測るわ。手首、失礼するわよ」

 先生はそれから黙って、砂時計の砂が落ちるのを見てた。

「熱も脈拍も正常ね。朝食はきちんと食べた? うーん、もうすっかり涼しくなったから、熱中症ではないわよねぇ。貧血かしら…」

 先生はしゃべりながらも、どんどん記録を書いていく。

「とりあえず、次の4時間目まで休んで様子を見ましょう。体調がよくなったら、給食の時間から教室に戻ってね。もしよくならなかったら、保護者の方に電話して迎えに来てもらうことにするわ」

 私は壁にかかった時計を確認した。あと1時間ぐらいは横になれる。よかった。

 その間に回復できるといいんだけど。

 でも、どうして、こんなに気持ち悪いんだろう?

 そのとき、突然、ニャアアアアアア…と猫の鳴き声が聞こえた。