「こちらこそ、よろしくね」

 笑顔でハヤト君に返事をした。

 だって、仕方ないじゃない。わざと魔法を使ったんじゃないもん。

 私はすっかり開き直ってた。

 でもその直後に、私は奈落の底に突き落とされることになった。

「先生ー、オレ、目が悪いんで、前の方の席がいいでーす」

 後方の席から声がした。

「おい、ハヤト、お前、視力いいよな? 席を替わってやれ」

「……はーい。残念だけど、小山、バイバイ」

 たった数分だけのお隣さん…。

 私は心底、ガッカリしながら、後ろに移動するハヤト君を見送った。

 そして、信じられない光景を目の当たりにした。

 なんと、移動先の隣の席は、サキちゃんだった。

 『よろしくねー』とハヤト君に話しかけるサキちゃんの笑顔に、私は泣きたくなってしまった。

 ああ、私が視力を上げる魔法を知ってればよかったのにっ! もしそうなら、今すぐに隣の男子にその魔法をかけたよー。もうっ!