ハヤト君には彼女がいないし、過去にいたこともない。つまり、まだ誰とも付き合ったことがない。

 でも、だからって、いつまでも安心してなんかいられない。

 なぜなら、ハヤト君はモテるから。いつ彼女が出来てしまうか分からない。この前なんか、女子バスケ部の先輩から告白されたらしい。

 今回は断ったらしいけど、いつハヤト君に初カノができてしまうかなんて分からない。

 私がハヤト君の彼女になれたらなー。

 めちゃくちゃ身分不相応な、大それたことを夢見てるのは自分でも知ってる。

 だって、私は自分が平凡な容姿だ、ってこと、よく分かってる。お父さん似のこの顔、せめてお母さん似だったらよかったのにな。

 それに目立った長所も、これといってなし。

 あっ、絵を描くのは少し得意だけど、でも、そんなのでモテるわけがないもんね。

 なぜかハヤト君は興味を持ってくれてるんだけど…だからって、それで私に恋をしてくれるわけじゃない、ってことぐらい明白。

 でも、それは過去の私の話。

 そう、『魔女』という最強の特技を手に入れたんだもん。