バスケ部がよく見える場所に座って、観察を始めてすぐ、私の目はハヤト君に釘付けになった。

 そのときはクラスも違ったし、名前すら、まだ知らなかったんだよね。

 入部したての1年生だもん、基礎練習ばかりだった。ドリブル、パスから始まって、シュート練習。

 それでも、私はその動きの美しさに、見惚れちゃった。

 夢中でハヤト君だけをスケッチした。顔を描き込んだりしないから、私以外の人にはハヤト君だとはバレないのをいいことに。

 バスケ部が休憩時間になったとき、驚いたことに、ハヤト君が私に話しかけてきた。

「何、描いてるの?」

 私は悪いことしてるみたいな気分になって、ドキマギしちゃって、上手くしゃべれなかった。

「び、美術部で…顧問の先生から言われて…運動部のス、スケッチを……」