「それで、どうしておばあちゃんに会いに行かないといけないの?」

「何でって…呪文を唱えずに魔法を発動できちゃうなんて、危険だからに決まってるでしょ!? お母さんと違って、おばあちゃんは魔力の強い魔女だから、相談しに行くの」

 お母さんはスマホを手に取った。

「善は急げ、よね。約束だけしておかないと。あの人、すぐに出かけちゃって、家にいないことが多いから…」

 トゥルルルル…トゥルルルル…トゥルルルル…

「ダメだわ。応答なし。携帯電話を携帯しない人だからなー。メール送っても、全然、見てくれないし…。この方法しかないわね」

 お母さんはメモ帳にささっと走り書きすると、窓まで移動し、窓を全開にした。

 次の瞬間…

 バサバサバサッ!!

 窓からカラスが店に入ってきた。

「きゃああぁ!!」

 私は慌ててのけぞったので、椅子から落っこちそうになった。

 黒猫は私のそばで、カラスのことを静かに観察してる。不思議なことに、跳びかかったりはしなかった。

「ツムギ、大丈夫だから、大きな声を出さないで。この子、お母さんの使い魔の、スミちゃん」