「地面は濡れていますが、予定通り、キャンプファイヤーを行います」

 先生の宣言に、『わあ』っと歓声が上がった。

 キャンプファイヤーの前に、早めの夕食を済ませた。今日はBBQだった。自分たちで次々に網の上で焼いて食べた。

「サキちゃん、歯にとうもろこしが挟まってるよ」

 私は他の人に聞こえないように、小声でこそっと教えてあげた。

 それなのに、サキちゃんは大声で笑った。

「あっはっは。私ったら、やっちゃった! ツムギちゃん、ありがと!」

 焼きたては何でもおいしかった。お肉も、玉ねぎも、椎茸も。

 でも、トレッキングで疲れてるのに、お腹いっぱい食べちゃって、眠くなってきちゃった…

「ツムギちゃん、キャンプファイヤーのとき、眠かったら、私に寄りかかっていいからね」

「ぷぷっ、何それ。サキちゃん、キャラ変してない? 美人キャラから男前キャラに」

 そのとき、赤い顔してうつむき加減のハヤト君がボソッと言った。

「お、オレの肩もある…」

 ん? そ、空耳?

 でも、私の心臓はドックン、ドックン、やかましくなった。

「ちょっと、いちいち張り合ってこないでよ」

 心臓の音がうるさ過ぎて、すぐそばのサキちゃんの声が遠くに聞こえた。