「娘に受け継いでもらえなかったところに、有望そうな孫が現れて、私は嬉しいねぇ」

 おばあちゃんが私を見てニンマリした。

「ちょっ、やっだー。私、ここの出身じゃないもん! お母さん、今からでもがんばりなよー」

「あっ、お母さんは無理よ、無理。ツムギ、よろしくね」

「お母さんには無理って、どうして?」

「魔力が弱いの。お母さんが発動できるのは、海水を蒸発させるだけの魔法まで。そこから雨雲を作り出すなんて、とてもじゃないけど不可能だわ」

「小っちゃい雨雲なら何とかならないの?」

「そういうことじゃないのよねぇ。雨雲が小さいか大きいかは、魔力の強さじゃなくて、魔力の量の問題なの」

「そういうことだから、ツムギ、時期が来たら、覚えるんだよ。楽しみだねぇ」

 ぞぞぞーっ。うわっ、背筋が凍る。

 その、いかにも魔女っぽい不気味な笑い、やめてーっ!

「…お母さん、なら、空気中の水分集めて、水を作る魔法は? それはお母さんも使えるの?」

「それぐらいならね。ほら」

 お母さんは水を作り出してみせた。

「湿度が高くてジメジメしてるときは、この魔法、重宝するわよ。だから、うちには除湿機がないの。来年の梅雨シーズンは、ツムギも手伝ってねー」

 お母さん、そういうところ、おばあちゃんの娘だね……