魔女の恋は空回る

「お母さん、雨降らしって?」

「昔々の話よ。おばあちゃんだって、実際には雨降らしなんて、やったことないもの。今みたいにダムもなくって、川から水路を引いたり、ため池を作ってたような頃の話」

「あー、水不足で悩んでるお百姓さんのために雨を降らしてたんだ!」

「正解! 雨を広範囲に、しかも、干上がりそうなため池をいっぱいにするまで降らすって、それはそれは大変なの。海水を蒸発させて雨雲を作って、降らせたい土地まで移動させるんだけど…」

「うわー、理科の授業みたい!」

「そうよ。理科は特にがんばりなさい。魔女には必須」

 げげげっ!!

「でね、1人の魔女が降らせることのできる雨量には限界があるでしょ? だから、昔の偉い人がここに魔女を集めて、雨不足で困ってる地方に雨降らしをさせた、ってわけなのよ」

 スゴい、スゴい! 魔女って、人の役に立ってたんだ!

「それに、雨降らしの合間に、効率的に雨を降らす魔法の研究もさせてたのよね。だから、この辺り出身の魔女たちは、それを受け継いでいってるの。実際、現代じゃ、雨降らしすることないんだけど。ま、無形文化財ってことで」