「何って…自殺？」

自分でもビックリするぐらい言葉がすんなり出て、普段は言わないような単語を何事でも無いように口にした。

「消えたいの」
「何でですか…」
「つまらないから」

淡々と今まで隠してきた思いを見ず知らずの彼に伝えた。

この世界が…自分の人生がつまらなかった。
私は普通の子とは違かった。幼い頃から早く死にたい、消えたいと思うようになった。
別に虐められた訳でも虐待があった訳でもない。本当に…ただ単につまらなかったのだ。

「死ぬなんて…ダメです…そんなの…絶対…」
「私の人生よ。いつ死ぬか…あなたに決める権利はあるの？」

男子だと言うのにおどおどした様子で私を止めようとする彼に思わず溜め息が零れた。
こんな子に私の意志を覆す何かなんてあるわけが無い。

「目の前で人が死ぬのを見たくないなら早く帰りなさい」

例え自殺だとしても目の前で人が亡くなる瞬間を見るのは辛いだろう。私は彼に忠告するように言った。

「か、帰りません…。僕はあなたを死なせません。」

聞き分けの悪い子だ。最期の優しさを見せたつもりだったのだが帰る気は毛頭ないらしい。

なら…

「あらそう」

私は彼を睨み付けるようにしながらゆっくり口角を上げた。
彼が帰ろうが帰らなかろうが、私を止める気であろうが私には関係ない。
私は今、ここから飛び降りて死ぬだけだ。たったそれだけ。

この出来事が彼の今後のトラウマになろうがどうでもいい。第一私は忠告したはずだ。「帰れ」と。
それを聞かなかったのは他でもない彼。
私は何も悪くない。

「や、やめてください！」

飛び降りようと私がしているのを察したのか、彼は大声を上げて私の元へ早歩きで来る。
彼が私の傍に来た時、彼の手によって私は物理的に飛び降りるのを阻止されるだろう。例え阻止されなかったとしても、相当の体力を消耗するはずだ。
死ぬこの時まで疲れたくなかった。

私は直ぐに柵から手を離して足を1歩前に出す。
落ちる瞬間彼の歪んだ表情が見えてほんの少しだが心がモヤモヤとした。
もう数秒もせずに私はコンクリートの地面に強く頭を打ち付けて死ぬのだろう。

バイバイお父さんお母さん…皆…。

すぐに来る衝撃に備えて私はゆっくりと目を閉じた。