「さむ…」

季節はすっかり秋になり、もう時期冬が始まるそんな日、私は放課後学校の屋上に訪れた。
真っ赤な大きい夕日と、冷たい風によって宙を舞う紅葉。視界に広がる世界は真っ赤だった。

「きれい…」

思わず口から零れた言葉は誰かに届くこと無く風と共に飛んでいく。
私の”最期”の日がこんな日で良かったと何となく思った。

屋上の柵に寄りかかって下を除く。
コンクリートに覆われた地面が随分遠くに見えた。

ゆっくり柵の外側に出る。柵の外側の床の幅はほとんど無くて、柵を掴むこの手を離してしまえばきっとすぐ真っ逆さまに落ちていくだろう。
そしてそのまま…。
寒さのせいなのか恐怖のせいなのか…微かに脚が震えた。

きっと寒さのせい…。

自分に言い聞かせるように、自分自身を落ち着けるように心の中で呟いた。

そしてゆっくりと深呼吸をして、少しずつ柵を掴む手を緩めていった…その時だった。

「何してるんですか」

聞きなれない男の人の声が後ろから聞こえて思わず振り返る。
そこには1人の男子生徒が立っていた。不安そうに眉をひそめて体の横で強く握り締めた拳は微かに震えていた。