アンドロイド・ニューワールド

「え、な、何って…」

「前から思っていたのですが、あなたは何故、体育の授業なのに制服を着たままなのですか?」

と、私は聞きました。

「あ、それは…。着替えるのに、皆より時間がかかるから…」

と、緋村さんは答えました。

成程、確かに彼は足がないので、上半身だけで着替えなければなりません。

車椅子に乗ったまま、介助なしに着替えるには、時間がかかるでしょう。

理解しました。

しかし、それなら簡単なことです。

「私が、着替えるのを手伝いましょうか?」

「…は?」

と、緋村さんは目を丸くして言いました。

「身体障害者の介助をしたことはありませんが、私は300キログラムの重さに耐えられるので、大して問題はな、」

「大問題!」

と、緋村さんは声を荒らげて言いました。

…何がでしょう?

「良い、良いから。制服のままで。どうせ、体育の授業は見学だし…」

「どうして見学なんですか?」

「それは…。入学してから、ずっとそうだったし…」

「…」

と、私は無言で思案しました。

そういえばそうでしたね。

あの差別主義者である体育教師に、無視されていましたからね。

「それに、この間も…一悶着あったし…」

「一悶着?」

「いや、久露花さん…。思いっきり先生に喧嘩売ってたじゃん…」

と、緋村さんは言いました。

私、そんなことしましたか?

あの体育教師に、正しい組織の在り方について教えた覚えはありますが。

喧嘩を売った覚えはありません。

私はあくまで、建設的な話をしたに過ぎないと思っているのですが。

「緋村さんは、体育の授業には出たくないのですか?」

「…それは…。出られるものなら、出たくはあるけど…。でも、この身体じゃ…」

「そうですか、出たいんですね。ならやりようはあります」

「え?」

と、緋村さんは首を傾げました。

「体育教師にも言いましたが、創意工夫の問題です。確かに皆と同じようには出来ないかもしれませんが、似たような真似は出来るでしょう」

「ど、どうやって…?」

「私が考えます」

と、私は答えました。