私は転入初日、湯野さんと悪癖お友達一行のお弁当を観察してからというもの。
人間という生き物は、茶色い食べ物を好んで食べるのだと学習しました。
従って私は、人間の感情を理解する為に、敢えて真っ茶色の焼きそばパンを。
炭水化物に炭水化物を挟むという、人間の斬新な発想、そう、味の叡智の塊である焼きそばパンを。
初日から昨日に至るまで、毎日食べ続けてきました。
しかし、今日はどうしたことでしょう。
いつも焼きそばパンが置いてある陳列棚は、空っぽになっています。
つまり、俗に言う売り切れという奴です。
私が買いに来る前に、既にこの学園内の別の生徒が、焼きそばパンを購入していったのでしょう。
売り物なのだから、品切れ、売り切れの可能性はいつだって存在します。
何故私は、その可能性を失念していたのでしょう。
「…切ない世の中です。今日当たり前にあるものが、明日にはなくなっているかもしれない…。今の幸福は、今しか味わえないかもしれない。明日に期待などしてはいけないのです。今、このときに全力を尽くさなければ…」
「…えーっと…」
「今回の件で、私はそれを痛感しました。やはり、経験して学ぶことが大事ですね」
「…うん…」
と、緋村さんは困ったような生返事をしました。
その間に私は、この問題の解決策を考案しました。
「よし。各クラスを回って、焼きそばパンを購入した生徒を探し、該当生徒に交渉して、焼きそばパンを買い取らせてもらうことにします」
「ちょ、まっ…!それは駄目だって!何考えてるの!?」
と、緋村さんは全力で私を止めました。
「止めないでください、緋村さん」
「止めるよ!」
と、緋村さんは言いました。
珍しく、大きな声で。
「何があったんですか?」
「それはこっちの台詞だよ。何で?久露花さんって、そんなに焼きそばパン好きなの…?」
と、緋村さんは聞きました。
好き?
「いえ、別に好きという訳ではありませんが」
と、私は答えました。
すると緋村さんは、ガクッ、と車椅子の上で、腰を折りました。
大丈夫でしょうか。
「じゃあ…何で、そんなに焼きそばパンにこだわってるの?」
と、緋村さんは聞きました。
「これまでの人間観察で、人間は茶色い食べ物を好むというデータを入手しました。従って私は、人間の感情を理解する為に、彼らの好む食べ物を摂取することで、彼らの食生活を追体験しようと思っています」
「…」
「その点、焼きそばパンは素晴らしい食べ物です。真っ茶色ですから。しかも炭水化物を炭水化物で挟むという、人間の叡智が詰まった食べ物です。『人間交流プログラム』を実践する『新世界アンドロイド』として、焼きそばパンを摂取しない訳にはいきません」
と、私は説明しました。
この上ない、丁寧な説明だったと自負しています。
すると。
「…物凄く、偏ったデータだ…」
と、緋村さんは言いました。
聞き捨てならない台詞です。
「どういう意味ですか?」
「あのさ、まず、確かに人間は…茶色い食べ物が好きなのかもしれないけど」
「はい」
「別に、茶色い食べ物だけが好きな訳じゃないから。赤でも、緑でも白でも好きだから。ほら、あれ見て」
と、緋村さんは言いました。
彼の指差す先には、真っ赤なゲル状の何かが詰まった菓子パンがあります。
「あれが何か知ってる?」
「ジャムパンですね」
と、私は答えました。
食べたことはありませんが、知識として知っています。
「あれだって、好んで食べる人はいるんだよ。ここに売ってる食べ物は、全部誰かの好物なんだよ」
「…!」
「だから、焼きそばパンにこだわらず、その日の気分で、日替わりで選んでみたらどうかな?」
と、緋村さんは提案しました。
私にとってこの提案は、まさに青天の霹靂というものでした。
人間という生き物は、茶色い食べ物を好んで食べるのだと学習しました。
従って私は、人間の感情を理解する為に、敢えて真っ茶色の焼きそばパンを。
炭水化物に炭水化物を挟むという、人間の斬新な発想、そう、味の叡智の塊である焼きそばパンを。
初日から昨日に至るまで、毎日食べ続けてきました。
しかし、今日はどうしたことでしょう。
いつも焼きそばパンが置いてある陳列棚は、空っぽになっています。
つまり、俗に言う売り切れという奴です。
私が買いに来る前に、既にこの学園内の別の生徒が、焼きそばパンを購入していったのでしょう。
売り物なのだから、品切れ、売り切れの可能性はいつだって存在します。
何故私は、その可能性を失念していたのでしょう。
「…切ない世の中です。今日当たり前にあるものが、明日にはなくなっているかもしれない…。今の幸福は、今しか味わえないかもしれない。明日に期待などしてはいけないのです。今、このときに全力を尽くさなければ…」
「…えーっと…」
「今回の件で、私はそれを痛感しました。やはり、経験して学ぶことが大事ですね」
「…うん…」
と、緋村さんは困ったような生返事をしました。
その間に私は、この問題の解決策を考案しました。
「よし。各クラスを回って、焼きそばパンを購入した生徒を探し、該当生徒に交渉して、焼きそばパンを買い取らせてもらうことにします」
「ちょ、まっ…!それは駄目だって!何考えてるの!?」
と、緋村さんは全力で私を止めました。
「止めないでください、緋村さん」
「止めるよ!」
と、緋村さんは言いました。
珍しく、大きな声で。
「何があったんですか?」
「それはこっちの台詞だよ。何で?久露花さんって、そんなに焼きそばパン好きなの…?」
と、緋村さんは聞きました。
好き?
「いえ、別に好きという訳ではありませんが」
と、私は答えました。
すると緋村さんは、ガクッ、と車椅子の上で、腰を折りました。
大丈夫でしょうか。
「じゃあ…何で、そんなに焼きそばパンにこだわってるの?」
と、緋村さんは聞きました。
「これまでの人間観察で、人間は茶色い食べ物を好むというデータを入手しました。従って私は、人間の感情を理解する為に、彼らの好む食べ物を摂取することで、彼らの食生活を追体験しようと思っています」
「…」
「その点、焼きそばパンは素晴らしい食べ物です。真っ茶色ですから。しかも炭水化物を炭水化物で挟むという、人間の叡智が詰まった食べ物です。『人間交流プログラム』を実践する『新世界アンドロイド』として、焼きそばパンを摂取しない訳にはいきません」
と、私は説明しました。
この上ない、丁寧な説明だったと自負しています。
すると。
「…物凄く、偏ったデータだ…」
と、緋村さんは言いました。
聞き捨てならない台詞です。
「どういう意味ですか?」
「あのさ、まず、確かに人間は…茶色い食べ物が好きなのかもしれないけど」
「はい」
「別に、茶色い食べ物だけが好きな訳じゃないから。赤でも、緑でも白でも好きだから。ほら、あれ見て」
と、緋村さんは言いました。
彼の指差す先には、真っ赤なゲル状の何かが詰まった菓子パンがあります。
「あれが何か知ってる?」
「ジャムパンですね」
と、私は答えました。
食べたことはありませんが、知識として知っています。
「あれだって、好んで食べる人はいるんだよ。ここに売ってる食べ物は、全部誰かの好物なんだよ」
「…!」
「だから、焼きそばパンにこだわらず、その日の気分で、日替わりで選んでみたらどうかな?」
と、緋村さんは提案しました。
私にとってこの提案は、まさに青天の霹靂というものでした。


