アンドロイド・ニューワールド

私は緋村さんと一緒に、購買部に到着しました。

「あなたは何を買うのですか?」

「そうだな…。何にしよう。久露花さんは何にするの?」

と、緋村さんは聞きました。

質問を質問で返すのは、褒められたことではありません。

が、この場合、あなたの意見を参考に、自分の選択を決めるという意思表示なのでしょう。

従って、私は素直に答えることにしました。

「私はパンを」

「そっか。じゃあ、俺も菓子パンにしようかな…」

と、緋村さんは言いました。

やはり、私の意見を参照するつもりだったようですね。

ならば、話は早いです。

私はいつも通り、菓子パンコーナーに、今日は車椅子を押しながら向かいました。

そして、私がいつも購入している、

…ん?

「…!」

「…え?大丈夫?」

と、緋村さんは聞きました。

私は、すぐに答えることが出来ないほどの衝撃を受けました。

なんということでしょう。

「私としたことが…何故この可能性を失念していたのでしょう…。研究所にいた時分、叡智に優れた『新世界アンドロイド』だと評価されていた私ですが、今回ばかりは、その名誉を返上しなければなりません」

「え、な、何で…?大丈夫?何かあった?」

と、困惑した様子で、緋村さんは聞きました。

「いいえ、大丈夫ではありません」

「え…!な、何が?」

「非常に由々しき事態です。そして緊急事態です。只今から私は、この問題を解決する為に、脳内の演算処理システム稼働に全エネルギーを使用することにします」

と、私は言いました。

そして、脳内にエネルギーを注ぎ込もうとした、

そのとき。

「ちょ、ちょっと待って。その動作、ちょっと待って」

と、緋村さんからストップが入りました。

「…何ですか?」

「いや、何ですかはこっちの台詞なんだけど…。何があったの?何の問題?」

「…」

と、私は無言で思案しました。

彼に相談したところで、何かが変わる訳ではありませんが。

しかし、折角助言を求められそうな人物が、目の前にいるのです。

私の演算処理システムを使って、問題の解決を図る前に。

まずは、緋村さんに相談してみても良いかもしれません。

「…ありません」

「…え?何が?」

「私がいつも購入している…焼きそばパンが」

「…」

このときの緋村さんの、ポカンとした顔は。

まるで、拍子抜けした人を絵に描いたような顔でした。

「え、そ…それだけ?」

「それだけって何ですか?これは重要な問題です」

と、私は答えました。